東日本大震災を境にして、日本のエネルギー政策は徐々に変化してきています。原子力発電所の過酷事故を目の当たりにし、クリーンなエネルギーへのシフトを望む国民の後押しもあり、2012年からは再生可能エネルギーの固定価格買取制度(FIT制度)がスタートしました。このFIT制度の導入によって、再エネの発電量は震災前に比べて3~4倍に増え、現在では全発電量の15%を占めるまでになりました。こうしたエネルギーシフトは、海外では日本以上に顕著化していて、IEA(国際エネルギー機関)が2016年に発表した全世界の再エネに対する投資額は3,130億ドルにも上りました。ちなみに、同じ調査で原子力に対する投資額は210億ドルとされていますから、実に15倍もの大きな開きが生じているのです。別の国際機関(REN21)によれば、世界の最終エネルギー消費における比率は、再エネの19.2%に対し原発はたった2.5%でしかありません。こうしたトレンドを鑑みれば、再エネへのエネルギーシフトがいかに世界の流れであるかが一目瞭然です。日本もこの流れにしっかりと乗らなくてはなりません。

 ところが、日本が掲げている2030年の再エネ導入目標は、たった22~24%でしかありません。他の先進国は、イギリスが2020年までに30%、ドイツが2030年ごろまでに55%以上、フランスは40%、アメリカのカリフォルニア州は50%などとなっているので、日本の22~24%という導入目標はあまりに消極的と言わざるを得ません。2017年に改定が予定されている次期エネルギー基本計画では、最低でも2030年30%以上を掲げるべきだと私は考えています。決して不可能な数字ではありません。実際、2016年5月の電源比率で再エネは21.9%を記録しており、2030年の目標をほぼ達成しているのです。

 再エネの普及拡大のためには、コストの削減にも努めなくてはなりません。今現在はFIT制度によって国民で支えている再エネですが、2030年には太陽光や風力では7~9円/kWhとなり、電力会社から買う電気の1/2以下のコストになると予想されています。これを裏付けるように、太陽光や風力のコストが世界的には化石燃料よりも安くなりつつあると、IEAが2016年8月に報告書を出しています。

 また、世界の主要な機関投資家の間では、化石燃料資産の座礁化を恐れて投資を撤収する動きが急速に広がっています。アメリカ、イギリス、フランス、ドイツ、オランダや世界銀行グループは、石炭火力には金融支援を原則行わない方針です。COP21で世界が合意したパリ協定に従い、世界の平均気温の上昇を産業革命前と比べて2度未満に抑えようとすると、世界が保有している化石燃料の80%は燃やすことが出来ないことが分ったからです。多くの温暖化ガスを排出する一因となる化石燃料には、世界的に厳しい視線が向けられています。

 低廉でクリーンな再エネは、未来への投資なのです。