菅義偉総理大臣は、令和2年 10 月 26 日の所信表明演説において、2050 年までに我が国の温室効果ガスの排出を全体としてゼロにするカーボンニュートラルの実現を目指すことを宣言した。この演説を契機に、脱炭素社会に向けた取り組みが一気に加速し、先般、国会において気候非常事態を宣言するに至った。こうした政府の動きを後押しするためにも、次期エネルギー基本計画の見直しにおいて、再生可能エネルギーの比率をより一層上げていくことは必須である。

 また、技術的実現可能性しかない技術より、経済的実現可能性を伴う技術に対し、優先度を高くし、積極的な税制優遇措置や支援制度を設けるべきである。例えば、水素についてみると、我が国の高い再エネの導入ポテンシャルに照らせば、ブルー水素といった外部性の高いものよりグリーン水素に投資の価値があることは明らかである。

 その一方で、気候変動に関する政府間パネル(IPCC)の「1.5℃特別報告書」によれば、気温上昇を 1.5℃以内に抑えるために、世界の電源構成における 2030 年の再エネ比率を 42~53%にする必要があるとしている。また、国際エネルギー機関(IEA)の持続可能な開発シナリオにおいても、2030 年の再エネ比率は 52%となっている。他の先進主要国でも、国際的な知見に整合する形で意欲的な導入目標が既に定められている。

 当議連では、 平成 29 年の第三次提言において、「エネルギー供給事業者による非化石エネルギー源の利用及び化石エネルギー原料の有効な利用の促進に関する法律で定める非化石電源比率 44 %を確実に達成するための検討をしつつ、長期的に再生可能エネルギーの更に高い導入水準を目指すべきである。」ことを提言した。

 我が国は再生可能エネルギーの高い導入ポテンシャルがあり、環境省の 2019 年度の報告書によれば、特に洋上風力発電はわが国の総発電電力量の約 3 倍の年間発電電力量3461TWh/年の導入ポテンシャルが存在する。再生可能エネルギーの主力電源化に向けた様々な取り組みが始まり、海洋再生可能エネルギー発電設備の整備に係る海域の利用の促進に関する法律によって洋上風力発電の大量導入に向けて道筋がついた現在、2050 年にカーボンニュートラルを確実に実現するためには、国際的な科学的知見と整合する形で、可能な限り省エネルギーを進めたうえで 2030 年の再生可能エネルギー比率を 45%以上とすることが求められる。同時に、予見可能性を高めるために、次期エネルギー基本計画では、2030 年の導入目標だけでなく、2040 年時点の意欲的な電源構成を示す等の検討をすべきである。いずれにしても、次期エネルギー基本計画では、菅政権の掲げた 2050 年のカーボンニュートラルの確実な達成に向けた道筋を国内外にしっかりと示すものとすべきである。