再生可能エネルギー普及拡大議員連盟は、今国会中に7回のヒアリングや議論を繰り返して以下の通り、再エネの普及拡大に向けた第三次提言を取りまとめました。最大のポイントは、2030年の電源構成の44%を再エネで相当程度まかなえるように高い目標の設定を政府に求めた点です。


 【提言】わが国では、パリ協定を踏まえ、2050年までに温室効果ガスの排出80%削減を目指すこととしており、温室効果ガスである CO2 を利用時に排出しない再生可能エネルギーの普及を促進する必要性はより一層高まっている。
 自民党資源・エネルギー戦略調査会再生可能エネルギー普及拡大委員会は、平成27年4月22日付「再生可能エネルギー普及拡大に関する提言」において、わが国の2030年の電源構成について再生可能エネルギーの導入目標数値を30%以上とすることを提言した。その後も、再生可能エネルギーの導入は大きく進んでおり、平成28年5月には再生可能エネルギー電気比率は21.9%を記録した。一か月間の実績とはいえ2030年の長期エネルギー需給見通しの再生可能エネルギー比率22~24%をほぼ達成している。また、九州電力管内では、平成28年5月に、電力需要の78%を再生可能エネルギーで供給する日も存在した。太陽光発電の固定価格買取制度の設備認定容量は平成28年12月末時点で8083.3万kW、バイオマス発電の設備認定容量は平成28年度末時点で1118.1万kW(暫定速報値)となっており、改正FIT法施行に伴う認定失効が発生するとはいえ、太陽光発電もバイオマス発電も長期需給見通しにおける2030年の導入見通しを上回っている。風力発電の導入状況をみても、2016年12月末の累積導入量は、323.4万kW、2017年1月末時点での環境影響評価手続中の案件は1049万kWとなっており、長期需給見見通しにおける2030年の風力導入見込み量1000万kWを2030年より前に達成するのは確実な状況になっている。
 一方、エネルギー供給事業者による非化石エネルギー源の利用及び化石エネルギー原料の有効な利用の促進に関する法律(高度化法)では、小売電気事業者が2030年度に自ら調達する電気の非化石電源比率を44%以上とすることが定められており、早期に中間目標を定めるべきである。
 エネルギー基本計画の見直しにおいては、原子力発電所再稼働をめぐる現時点の状況に鑑みると長期需給見通しにおける原子力発電所の2030年における導入見通し20~22%が達成できない可能性があること、及び、上記のような再生可能エネルギーの導入状況を踏まえ、高度化法で定める非化石電源比率44%を再生可能エネルギーだけで相当程度賄える高い導入目標を掲げるべきである。
 当該目標を達成するために、解決すべき政策課題を、以下の通り指摘する。

<各電源に共通の政策課題>
●改正FIT法の施行によって認定が失効する案件は、2766万kWと暫定的に推計されているが、失効により連系枠が解放される見通しが明らかでない。認定失効案件の連系枠を迅速かつ計画的に解放し、電源接続案件募集プロセスなど既存の系統連系手続きに反映すべきである。また、火力発電所の計画中止や原子力発電所の廃炉などが発生した場合は、当該電源の連系枠を計画的に解放し、リードタイムの長い再生可能エネルギー電源等に活用するなどの方策を検討すべきである。
●系統情報について熱容量面だけでなく電圧面や実際の潮流状況等より一層の公開を進めるために再エネ事業者が参加できる場での検討を行うとともに、系統運用や状況に関する情報のリアルタイムでの公開等による透明性の確保を検討すべきである。一般電気事業者が火力、揚水発電所等を調整電源としてどの程度積極活用しているのか、第三者が客観的かつ公平に評価したうえで、情報を開示することを検討すべきである。
●再生可能エネルギーの設備導入量(kW)に応じた送電線の整備をする場合、送電線の利用率が低下する可能性が高く、経済的にも非効率となるため、リアルタイムでの系統・電源両面の制御・運用による系統運用の最適化を前提とした電源接続(Connect&Manage)へと運用を見直すことを検討するとともに、気象予測やIT技術等先進的な技術を活用することにより連系可能量を拡大するような方策も検討すべきである。
●地域間連系線のマージンの活用の検討、2018年度より導入予定の間接オークションが最大限機能を発揮できるよう継続した形での市場の監視、北本連系線など混雑が見込まれる設備の増強の検討など電力の広域運用の更なる拡大を進める方策を講じるべきである。
●電源接続案件募集プロセスにおいては、接続契約を締結するまでに通常の場合と比べて長い年月を要するが、買取価格の決定時期は接続契約の締結となるため事業の予見性が確保できない。事業の予見性確保のため、買取価格決定の時期を前倒しすることも検討すべきである。
●改正FIT法が施行され、みなし認定を申請後に事業認定が取得できるまでの期間や名義変更のために要する期間が明示されていないため、発電事業者が事業を進めるうえで見通しを立てることができず、金融機関との折衝や電力会社の協議その他に支障が出ている。事業認定取得までにかかる目安となる期間を早期に公表し、発電事業者が事業計画の見通しを立てることができるようにすべきである。
●権利関係が不明確な土地の活用推進にあたっては、風力や太陽光などの再生可能エネルギーに活用できるような規制緩和も検討すべきである。特に、福島県浜通り地域では、農地や遊休地などを太陽光発電に積極的に活用して地域活性化や被災者支援に繋がるような方策を検討すべきである。
●託送制度の見直しが行われ、発電事業者側に託送料金が課金されることも検討されているが、FIT制度においては、調達価格の算定の際に託送料金の負担は前提となっていないため、FIT制度の調達価格と託送料金の整合性を確保するような形で検討すべきである。
●再エネの導入を促進するためには分散型エネルギーシステムを活用したエネルギー供給システムの最適化が必要である。そのためには、地域ごとの地産地消を前提としたスマートエネルギーネットワークの構築を一層推進するべきであり、コージェネレーションを含めたエネルギー供給プラントや熱導管等の整備に向けた官民共同の取り組みをさらに強化すべきである。

<風力発電の政策課題>
●洋上風力発電の導入拡大にあたっては、一般海域への洋上風力発電の設置が有効であるが、一般海域の利用に関するルールが不明確であるうえ、各自治体の条例に委ねられている。一般海域への洋上風力発電の設置にあたり、合意形成の必要な関係者の範囲・合意形成の方法、占用者・占用範囲を決める手続き、占用期間、占用許可の条件、占用料などについて、国が主導して全国統一的なルールを早急に策定すべきである。
●洋上風力発電については、陸上風力発電と同様に地域ごとに環境アセスメントや系統対策、地元調整などの課題の解決が不可欠であることから、自治体、地元関係者、発電事業者等が参画し、地域における規制等に係る円滑な調整等について検討を進める「導入促進地域」の設定を検討し、国や行政が積極的に関与する形で円滑な社会的合意形成の促進を図るべきである。
●NEDOは洋上風力発電の設置場所を計画する上で必要な情報を一元化した洋上風況マップを公開しているが、風車の配置・設計・施行で必要となる情報や風車の配置で物理的に配慮が必要となる情報など風力発電事業者が活用できる観点にたった更なる充実が望まれる。
●一般海域における洋上風力発電事業は商用ベースでの事業実績は存在せず、地質リスクなど港湾区域とは異なるリスクが存在するため、国による調査の実施等の初期の開発支援や、洋上風力発電の設置に機能的な港湾等のインフラ整備の推進、SEP船をめぐる法規制の緩和、許認可手続きの簡素化など包括的な支援を検討すべきである。
●洋上風力発電の事業期間終了後の原状回復については、欧州における実績などを踏まえながら合理的な方法を検討すべきである。
●FIT制度の買取価格については、系統接続費用が増加していることを踏まえ、必要であれば単価の引き上げも含め、導入拡大を阻害しないような適正なFIT価格を設定することを検討すべきである。本年度から風力発電所リプレースに対する買取価格が創設されたが、価格が適正な水準か否か継続して検証をするとともに、小規模風力発電所については円滑なリプレースのための支援策を検討すべきである。
●環境影響評価制度の期間の短縮化を進めるため、運転開始後の事後調査データを活用し、環境に対する影響が軽微な評価項目及び調査手法の合理化、対象規模要件の見直し等を検討すべきである。また、風力発電設備のリプレースの場合には、長年の運転実績があることから環境影響評価手続きにおいても、調査項目や調査手法の簡略化なども検討すべきである。
●小形風力発電機は海外メーカーが大半であるが、部品供給やメンテナンス体制継続のために国産メーカーによる小形風力発電機の事業化の支援を検討すべきである。
●小形風力発電機の設置に関するガイドラインを策定する自治体が存在するが、その妥当性について調査すべきである。

<太陽光発電の政策課題>
●太陽光発電の過積載は、メリット・デメリットを検討のうえ、規制にあたっては、適切に事業を営む発電事業者の活動を不当に制約しないような形を検討すべきである。
●耕作放棄地や荒廃農地は、一定の期間を設けて、再生可能エネルギーの利活用については認めることも検討すべきである。
●FIT適用の太陽光発電にエネファームや蓄電池などを併設した際の系統への逆潮流を可能とするため、FIT電気と非FIT電気の発電が混在する場合の計量に関する制度的諸課題を早期に解消すべきである。
●電気主任技術者を含めて、太陽光発電設備の保守点検を行う技術者の人材が不足していることから、人材育成のための施設・講師の整備のための予算措置を検討すべきである。また、保守点検事業者の不具合データの管理による点検の効率化や保守点検作業用ロボット等保守技術の高度化を図ることも検討すべきである。
●太陽光発電設備の中古市場の創設は、太陽光発電設備の動産担保力確保にとっても重要であることから、中古市場の構築に向けた支援を検討すべきである。

<水力発電の政策課題>
●電源立地地域対策交付金(水力発電施設周辺地域交付金相当分)については、関係自治体の要望を聞いたうえで、中小水力発電の導入を促進するようなあり方を検討すべきである。
●河川の新規地点における小水力発電を普及させるため、一般電気事業者の保持する河川流量データの共有ルールの整備や、国等が保有する河川流況データの一元提供・利用促進を一刻も早く実現させるべきである。
●河川法23条の水利使用許可にあたり提出が必要となる「流量資料」に関し、10年間の実測資料がない場合に、「取水地点で1年の実測調査」をしたうえで「近傍地点の実測資料を流域比で計算したデータで代替する」運用を取っていることについて、国から都道府県に対してあらためて通知し、近傍地点の実測資料が10年分存在しない場合の在り方や近傍地点の解釈の統一化など河川における新規の小水力発電が普及に資するような形での方策を検討すべきである。

<バイオマス発電の政策課題>
●森林・林業基本計画では2025年度までに燃料材として800万㎥が目標となっているが、より意欲的な目標を設定し、その目標を達成するための措置を検討すべきである。
●林地残材や集材時に発生する未利用材の利用拡大に向けて利用可能な未利用材の調達環境の整備に関し、路網の整備や運送費等の補助など未利用材を搬出できるための支援策を検討すべきである。

<地熱発電の政策課題>
●温泉水を使わない地熱発電又は小規模で温泉等に影響の少ない地熱発電について、過剰なモニタリングを義務づけることのないよう、自治体の条例も含めてモニタリングの在り方を検討すべきである。
●地熱発電はリードタイムが長く導入が進んでいないため、地熱発電の普及拡大のための新しい取組に対する支援策を検討すべきである。

<ディマンドリスポンス市場の更なる拡大に向けた政策課題>
●ネガワット取引は需要家の参加が重要であることから、その具体的な制度設計にあたっては、需要家に参加のインセンティブが与えられるようにするとともに、蓄電池のような高い制御性を有するリソースを評価するメニューの設定や一般送配電事業者がネガワットをオンライン要請できる仕組みの構築などネガワットの利点を評価できる制度整備を検討すべきである。
●旧一般電気事業者の小売部門と独立系アグリゲータ―が公平に競争できるよう、調整力入札のプログラムデザインを行うための協議の場へ独立系アグリゲータ―の参加の機会を設けるとともに、電力メーター情報へのアクセスを独立系アグリゲータ―に認めるなど情報の非対称性の解消や、調整力公募におけるプログラム条件の在り方・リアルタイム市場・容量市場の制度設計においてイコールフィッティングを実現させることを検討すべきである。また、旧一般電気事業者小売り部門と新規参入者との間での競争格差を継続してモニタリングできるようにすべきである。
●厳気象対応(稀頻度リスク対応)については今後の市場設計の中で埋没しないよう市場設計において確実に位置付けることや、厳気象リスク対応の予備力(緊急時予備力)の適正なあり方について検討すべきである。

<蓄電池の普及拡大に向けた政策課題>
●蓄電池は、電力の調整のみならず、系統保護、防災・災害対策、有事対策などにも活用でき、より一層の普及が望まれている。蓄電池普及拡大のための方策としては低コスト化の実現がある。系統蓄電池の設置にあたっては一般電気事業者との協議によって蓄電池の容量を最小化できるよう国で指導するとともに、社会の公共財として蓄電池の公共投資での整備など長期的な蓄電池低コスト化のためのあらゆる方策を国においても検討すべきである。
●固定価格買取制度の買取期間が終了した住宅用太陽光発電が2019年には約50万世帯に発生することから、家庭用蓄電池のニーズも高まっている。その一方で、蓄電池について性能・安全性に関して消費者が知り得る基準がないため、トップランナー制度などの制定により消費者に分かりやすい形で性能・安全性の比較ができるようにすることを検討すべきである。