舛添知事が辞職をすると石原・猪瀬に続いて3回連続の出直し選挙となる。何かしらの理由により任期途中で首長がいなくなり選挙となったのは、平成に入ってから都道府県で28回、政令指定都市で5回ほどある。ちなみに、計33回の退任理由を見てみると、辞職28回、失職2回、死去3回と圧倒的に不祥事によるものが多いと言わざるを得ない。

 その出直し選挙の費用を見てみると、長野県の田中康夫氏の時が10億6千万円、大阪府の橋下徹氏の時が36億5千万円、前回の猪瀬直樹氏の時が46億1千万円、政令市の千葉市や横浜市でも2億5千万円と結構な税金が投入されている。もちろん、国政選挙ではなく自治事務なので、その選挙費用は当該自治体の住民負担となるのは言うまでもない。

 これって何とかならないものか。

 これらの自治体には、副知事や副市長がいる。地方自治法では、長に事故があったり欠けたりした場合、副知事や副市長に職務代理権を認めている。じゃぁ、舛添さんが辞めたら数十億円もかけて選挙をするよりも、副知事が舛添さんの任期満了まで職務を代理すれば良いのでは?と思う方もいるでしょう。しかし、この職務代理権は新しい首長が選挙によって選ばれるまでであり、任期満了まで務めるということは想定されていない。それはなぜか。

 日本国憲法第93条2 地方公共団体の長、その議会の議員及び法律の定めるその他の吏員は、その地方公共団体の住民が、直接これを選挙する。

 とあるので、副知事や副市長は選挙で選ばれていないからダメなのだと言われている。今回の舛添問題を受けて、内閣法制局に改めて確認をしてみたが、同じような回答であった。ちなみに、憲法条文にあるその他の吏員は法律で別に定めを置くことになるのだが、現在、その他の吏員を定める法律は存在しない。

 では、過去にはその他の吏員を定める法律が存在していたのかと言えば、答えはYesとなる。いつ頃の何て法律なのかと言えば、昭和の初期頃の教育委員会法である。当時の教育委員会法で教育委員は、当該自治体の住民による選挙によって選ばれることになっていた。

 この教育委員選挙は、現在の統一地方選挙のように基本的には全国一斉に行われており、最後の回である第3回は昭和27年10月に執行された。その後、昭和30年5月に品川区、目黒区、豊島区、葛飾区で補欠選挙が執行されたようだ。私が調べた範囲ではこの補欠選挙あたりの時期が、その他の吏員が選挙で選出された最後の選挙で、その後は現在に至るまで、その他の吏員が法律で定められて選挙が執行されたことはない。

 首長の不祥事ごとに数十億円もかけて選挙を繰り返すことが本当に必要なのか考えなければならない。例えば、アメリカの大統領選挙時の副大統領のように、首長選挙時に副知事、副市長(都道府県と政令市を想定)を一緒に選挙で選んで、首長に事故ある時は任期満了まで務めることも検討に値するのではないだろうか。この時に、憲法に定めのあるその他の吏員に組み込むことで、法解釈で憲法の定めをクリアー出来るのか、もし不可能ならば憲法第93条そのものについて、しっかりと議論をすることも必要なのではないだろうか。

 舛添知事は自民党を除名された方だ。今回の件で、選挙時の推挙そのものに抗議申し上げたことを思い出した。はぁ、こんなセコイ話に50億円も費やすことになるのか・・・もったいない。