福島第一原発の汚染水については様々な課題が存在しており、それらへの対応を検討するため、資源エネルギー庁が国際廃炉研究開発機構(IRID)に対して、技術提案募集の事務手続きを委託し、6つの分野に関する技術情報を広く国内外に募集した。そして、この6つの分野の1つに、「汚染水処理(トリチウム分離技術)」があり、本分野には国内外より182件の応募があった。しかし、即効性があると認められる技術は見受けられないとされ、今後は技術提案のあった対策について評価を行っていく方向となった。また、昨年11月末に来日したIAEA(国際原子力機関)調査団からは、「あらゆる選択肢を検証するべき」との助言もあった。

 ここまでが昨年の話し。

 これらの検討経緯を踏まえ、現時点におけるトリチウムの分離技術に関する最新の知見を得るために、経済産業省がトリチウム分離技術検証試験事業というものを今やっている。その技術を公募する対象事業の説明が以下のようになっている。

 「福島第一原発内で発生する汚染水については、62核種を取り除く取組を実施しているものの、トリチウムが分離できずに残るため、トリチウム分離技術に関しての検証試験を実施すること。具体的には、福島第一原発内で発生しているトリチウム水(6.3×105Bq/Lから4.2×106Bq/L(採取時期により濃度が異なります))を対象に、分離性能の検証を行うため、任意の規模の設備を構築し、分離性能、建設コスト・ランニングコストを評価できる検証試験を行います。」

 ところが、この前提条件として次に書いてある言葉を見て驚いた。

 「本事業の実施に際しては、「処理水」について、東京電力(株)より、検証試験を実施する上での必要最小限が提供されることを前提とします(受入に必要な許認可手続きは事業者自身で取得していただく必要があります)。「処理水」に含まれるトリチウムの濃度は、6.3×10の5乗Bq/Lから4.2×10の6乗Bq/L(採取時期により濃度が異なります)程度です。これに加えて、Co-60が7.0×10の-1乗Bq/L、Ru-106が3.0×10の1乗Bq/L、Sb-125が9.8×10の-1乗Bq/L、I-129が4.6×10の1乗Bq/L程度含まれることを前提とします(ただし、これらのトリチウム以外の核種を分離することを要求しているものではありません)。」

 トリチウムではない放射性物質も混じっている!?水中からトリチウムを分離する技術を募集しているはずなのに、Co(コバルト)、Ru(ルテニウム)、Sb(アルチモン)やI(ヨウ素)が混じっているではないか。

 一般的にALPSで処理するとトリチウム以外の62核種は取り除けると思われている。私もつい先日までそう思っていた。東京電力のHPにおけるALPSの記載でも、トリチウムを除く「62種の放射性物質の除去が可能」と書いてある。ところが、上述のようにALPS後の汚染水からトリチウムを分離する技術検証の前提条件を確認すると、トリチウム以外に4つも放射性物質が記載されている・・・。違和感を覚え慌てて原子力規制委員会の議事録を確認したところ、除去性能が十分ではない核種が未だ4つあると今年の2月5日に報告されていた。

 ALPSが除去できる核種は62種ではなく58種だった。

 「トリチウム以外の核種を分離することを要求しているものではありません」などと書いてはあるが、トリチウムの分離技術は非常にセンシティブであり、他の核種が1つでも入ることによって大きな影響が出ることは想像に難くない。トリチウムの分離技術検証にこのような前提条件をつけるなんてことはあり得ない。なんちゃって62種のALPSにこそ、しっかりと条件をつけるべきだ。